黒いトイレットペーパー!?のRenova社の話の続きですが、私たちINSEADの生徒に出された選択肢としては、黒いトイレットペーパーを出すというオプションの他に、
- 価格を下げる
- プライベートブランドのOEMを担う
まず、「1.価格を下げる」ですが、
- 競合であるプライベートブランドが益々力をつけていて、
- しかも日用品のため、消費者が最も重視するのは「価格」。
- 通常は、消費者に対して付加価値を伝えきるのは難しい。
ということを聞くと、じゃあ価格で勝負しているプライベートブランドに対抗という意味で特に不自然ではないと思いませんか? しかし、(あくまでもざっくりとですが)2つのデメリットを思い浮かべることができるようです。
まずは、儲けがどれだけへるからどの程度の追加の数を売らなければならないか、という算数を解かなければなりません。例えばの話、6ロール入りパックの希望小売価格を400円から1割引にして360円に下げるとします。
値引き前 | 値引き後 | |
---|---|---|
小売価格 | 400円 | 360円 |
小売側の取り分 | 80円 | 80円 |
卸価格 | 320円 | 280円 |
原材料/人件費等のコスト | 240円 | 240円 |
我々のもうけ | 80円 | 40円 |
小売側の取り分が仮に値引き前の価格の2割である80円だとすると、値引きをしたからといって取り分まで下げてくれる親切な小売りはいないことが多いでしょう。また、原材料/人件費等のコストも仮に値引き前の価格の6割である240円とすると、そう簡単には変わりません。そうすると我々のもうけは、以前の80円から40円へと半分に減ってしまうのです。たった1割の値引きで、倍の数量を売らないと以前と同じもうけが得られなくなると言う訳です。
もう一つのデメリットは、流通コストをカットできるため強大な価格競争力を持つプライベートブランドとの価格戦争に陥ってしまうと、まあ負けてしまうだろうという筋書きが見えますね。また、商品棚をコントロールしているのもプライベートブランドを持つ小売側ですから、明らかに不利な立ち位置となりそうですね。
また、「2.プライベートブランドのOEMを担う」については、プライベートブランドに対して価格コントロールができるという点では戦略的に優位に立てるケースが多いようですので、これはメリットかもしれません。しかし、「健康、安心を提供する会社」Renova社にとっては、「安かろう悪かろう」のイメージの強いプライベートブランドのOEMをしているということが消費者に万が一知られてしまうと、これまで築き上げてきた差別化の努力がムダになってしまう可能性もあります。やり方によって効果は異なるかもしれませんが、Renova社の目指す方向性とはずれているように思われます。
という訳で、こんな形で検討していくと、これら2つの選択肢は違うかも、という結論にたどり着くと思います。だからといって突拍子もなく黒いトイレットペーパーという打ち手が最適という結論には一足飛びにはいかないと思いますが・・・。
Renova社は黒いトイレットペーパーを投入することで、トイレットペーパーメーカーとしての新たなポジショニングを確立しました。このあたりは、「マーケットをドライブする」という意味では右脳的志向も必要になるのだと思います。
ちなみに、Renova社は、2008年に我が国でも、表参道ヒルズにてキャンペーンを行ったことがあるようです。
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