2011年9月22日木曜日

INSEADにはJapan ClubとかJapan Trekはないです

はっきりと言いますが、INSEADには、他のビジネススクールにあるような「Japan Club」とか「Japan Trek」はないデス!

それはズバリ、いい意味で「ニーズがない」ことが原因かと。

一体どういうことかというと・・・

1.日本の文化・ビジネスには既に一定の理解を持っている
INSEAD生の多くは、元々自国に留まらず、海外ビジネスや海外旅行であちこちを飛び回っている人がほとんどです。中でも、驚くことに、日本のことは結構知っている、ないしは、日本になら行ったことがある、という人が比較的多いのです。

2.日本にまでTrekに行く時間がない
また、INSEAD生は、びっしりのスケジュールの合間をぬって旅行に行くので、最長でも2泊くらいでないとTrekとして魅力的ではありません。(実際近隣国であるドイツやイギリスのTrekはありました)日本は高いから、行くのであればせっかくならばゆっくり時間をとって行きたいという人も多かったです。

・・・という感じですかね。

しかし、INSEAD生ったら日本をよく知ってること!

P2の戦略の授業の中で、Horizontal Integration(企業の水平統合)という概念を学んだ時、例として教授が日本のケイレツの代表である「MITSUBISHI」のことをあげました。そして、教授から「MITSUBISHI」はどんなビジネスに関わっているかと聞かれた時、クラスルームのあちこちから「貿易」「自動車」「電化製品」というよく知られているビジネスだけではなく、「軍需」「化学」「ビール(キリンビールもグループ会社なので)」といった、よく知ってるな〜と思わせられる事業が次々と上がり、それを教授が黒板に書き込んでくと、ものの2、3分で黒板が埋まってしまったのです。

私のクラスメートでは、日本人が血液型にこだわることを知っている人、オノマトペ(ザーザーとか)の利用方法を聞いてくる人、牛角のファンの人、とんかつのまい泉のファンの人、私より日本酒の産地やお祭りに詳しい人など、日本を知る人が多くて本当にびっくりしたものです。

また、日本語をしゃべることが出来る人は、うちのクラスで3名(70名中)いました。

INSEAD、そこには世界数十カ国からの生徒が集まります。ヨーロッパのビジネススクールの最もいいところのひとつである、「国際性」は、INSEADの中ではより一層際立ちます。それは、Admissionが出身国10%ルール(同じ国からは10%以上入学できない)と3カ国語ルール(英語、母国語の他に、もう一つ言語を習得する必要がある)をきっちりと守っていることに他ならないと考えています。

日本を代表してINSEADに行くというのは確かにそうなのですが、それは、INSEAD生に対して「日本は製造業が強い」とか「着物を着る」という基本的事実を紹介するのとは違う、と実際にINSEADでの経験を通じて痛感しました。私にとっては、そうした「事実」を踏まえながら、自分が日本という国に生まれ育って、何を感じ、何を学び、何を経験してきたか。それに基づいて自分の意見をグループワークやクラスルーム、または社交の場でしっかりと伝えることこそが重要だったと思っています。私は、それこそが、今後益々進む世界の国際化の中でビジネスパーソンとしてやっていくために非常に役に立つことだと思うのです。

2011年9月13日火曜日

意思決定をするための練習

Models for Strategic Planning - この授業はとって本当に良かった。

「我が社は全国数カ所でワインを製造しており、各地のレストランに販売している。もっとワインを売って利益を最大化したいのだが、最も需要の高いレストランの近くにある工場の製造能力には限りがあり生産が追いつかない。かといって遠くの工場で作ると運送にコストがかかってしまう。外注に出来合いのワインを発注するというオプションもある。こうした中で、どの工場で何本自家製造し、外注には何本注文するといいか」

「あなたは鉄の製造工場の責任者。需要が急速に伸びていて、工場の生産能力の拡大を検討している。しかし、原材料費が高騰していて、生産すればする程赤字になる可能性がある。また、需要拡大にも不確定要素が多く、生産能力を拡大したところでムダになる可能性もある。あなたは、投資の決定を判断するべきか、否か。また、決定にはどんなオプションがあるか」

おそらく、ビジネスをしていれば、こういう意思決定に直面する機会も少なからずあることと思います。いや、むしろ、こういう意思決定の連続がビジネスなのでしょう。

「意思決定とは何ですか?」教授のこの一言からこの授業は始まりました。

うーん、何らかの目的を達成するために何をするかを決めること? 改めて聞かれると、そんな漠然とした答えくらいしか思い浮かばない。。。講堂にいるみんなもどうやら同じ答えの様子。

次に、「正しい意思決定とはどんな決定ですか?」と問いただされました。目的を達成する結果が出せた意思決定? みんな、これまでの流れが頭にあるからか、さっきと同じような答えしか出てきません。

すると誰かが「正しい意思決定とは、後悔しない決定のこと」と言い、そこで教授が大きくうなずきました。「そうなんだよ、正しい意思決定って、適切なプロセスを経て決める決定のこと。しっかりといくつものオプションを検討して、後から考えた時に、自分は正しいプロセスを経た、と言えるのが正しい意思決定。結果じゃなくてプロセスが大事なんだよ」

えぇ? 結果じゃないの? そんなこと、考えたこともなかった。

私は、本当に意思決定が苦手な人なのです。自宅マンション購入の際も、転職先を見つける際も、もちろん仕事でも、だらだらと時間をかけてしまうとか、もしくは、あまり考えずにとっとと決めてしまうとか、後から考えると、あーこうすればよかった、ああすればよかった、と後悔することが多かったのです。思い起こしてみれば、判断基準が曖昧だったため後悔しているのであって、確かにプロセスに問題があったと言えます。

この授業は、ビジネスで戦略的な意思決定を行う際の手法を学び、それを実際にワークショップ形式で体で覚えていく、という、塾を思い出すかのような授業です。具体的には、意思決定をする時の枠組み、検討事項、オプションを、適宜ささっと思いつくようになるまで練習します。ここでは何事も数値化するのが鉄則なのですが、計算には、金融モデルを作るときのツールでもあるエクセルのソルバーというアドインや意思決定ツリーなどのツールを使います。

ただし、正解はない場合が多く、それは、それぞれの人がどのような価値基準に基づいているかによります。例えば、冒頭の例題の場合だと、「どうせ需要は変化するのだから、身軽のままで迅速に商機をつかんでいくためには、多少利益は圧縮されるかもしれないけれどもアウトソースを選ぶ」、とか、「いやいや、これから需要は伸びるのだから、投資をして需要の高いレストランに近い工場の製造能力を増やす」とか、いろんな決断があるのです。

何度も何度も繰り返して練習していくと、それぞれの手法が頭に染み付いてきます。私の場合は、この授業を受けてからは、日常のこまごまとしたことから、人生の節目となる判断に至るまで、知らず知らずのうちに学んだ手法を頭の中で応用していて、判断のスピードが早くなったばかりか、決定に対して後悔することがほぼなくなりました。

これからも、忘れずに日常生活だけではなく、もちろん、ビジネスの場でも生かしていきたいと考えています。

2011年9月7日水曜日

INSEADの卒業生は結束が固い

どのビジネススクールでも、受験の為に説明会に行くと「○○,○○○人の卒業生ネットワーク」ということが、その学校の売りとして出てくると思います。が、それがどんな風に生かせるのか、具体的なイメージまで湧くことはないでしょう。

INSEADもそんな学校の一つと思いますが、ここでは、私が真に感じたINSEAD卒業生のネットワークのすごさをお伝えしたいと思います。

まずは、就職活動の際の助け合い。INSEAD.Connectという卒業生用のオンラインコミュニティがあり、これまでの卒業生が、居住国、現在勤めている会社や連絡先等を登録しています。そこには、現役の学生も入ることができ、就職先として応募したい企業に勤めている人を抽出することができます。私の場合は、とある企業に応募した時に、その企業に勤めている人にコンタクトし、実際に会わせてもらったり、電話で話したり、メールのやり取りをするなどして、企業風土や面接への率直なアドバイスをもらうことができました。また、社内の同僚に面接官のバックグラウンドを聞いてくれたりして、本当に役立ちました。見ず知らずの学生からの突然の連絡にも、「INSEADだから」という唯一の理由で、こんなに親身におつき合いいただいたのです。

そして、日本でのINSEADのアルムナイの交流もこれまたすごい。2ヶ月に一回、同窓会があるのですが、必ず、最低20〜30人は集まります。年に一度のクリスマス会ともなると、200人は超える参加者。もちろん、人脈作りやなつかしい同級生に会うというのもメリットですが、INSEADだと、さらにひと味加わるのです。INSEADの卒業生は起業家が多いのですが、日本でも例に漏れず、こうした集まりにいくと、そのビジネスはこうだ、ああだ、人材はこうした方がいいああした方がいい、とありとあらゆるアイディア、意見が活発に交換されています。実は他のビジネススクールの同窓会にも参加したことがあるのですが、参加人数、その場の雰囲気ともに少し控えめな感じで寂しく感じたものです。INSEADって本当にすごいんだ!と実感しました。

INSEADの結束の固さを最も感じたのは今回の東日本大震災の時です。地震発生後すぐに、日本人のINSEAD現役生で話し合いを進め、校内で義援金を募ることを決めました。事務局(MBA Programme Management)、就職課(Career Service)のいち早い理解を得ることができ、数日で募金サイトを立ち上げました。その後、世界中のアルムナイにメールを送ると、たった2週間程で、446名もの異なる卒業年のアルムナイから、50,000ユーロを超えるお金が集まったのです! (中には一人で1,000ユーロ募金して下さるアルムナイもいたりして、びっくり!!)史上最悪の事態となった今回の大震災の危機的状況にすみやかな理解をし、社会的責任に基づいて迅速に行動を起こす、というINSEADイズムのようなものを感じ取りました。

しかしINSEADの結束が固いのは何故なんでしょう?
まったくの私見となりますが、INSEADではみんなが「外人」であり、学校生活だけでなく私生活をも助け合いながら10ヶ月間をみっちり過ごす、というのが根底にあると思います。フォンテーヌブローもシンガポールも小さな町ですが、住むという意味でははじめてという人がほとんどです。「外人」として、言葉もしゃべれないし、町のことは最初は何も知らない訳ですから、みんなが情報を交換しないと生きていけないのです。たとえば、不動産、日用品買い物、レストラン、イベントなどの情報等です。しっかりと社交の輪の中に入っていないとこうした情報を入手することはできず、一方で輪に入れば、情報交換だけではなく旅行等いろいろな行動を共にしていき、学校生活での助け合いも進みます。こうしていくうちに、INSEADとしての絆が深まっていくのです。

私が本当に誇りに感じているINSEADの一面でした。

2011年7月29日金曜日

フランスのベビーシッター制度はスバラシイ!!

フランスではベビーシッター制度が充実しており、0歳児でも気軽にあずけることが出来ます。このベビーシッターは、フランスではNounou(ヌヌと発音)と呼ばれており、日本でいうベビーシッターとは若干違います。

特徴としては、まず、ベビーシッターさんのお宅で子供の面倒を見ることがあげられます。これは、すなわち、各ベビーシッターのこれまでの経験・知識がぎゅーっと凝縮したシステムが各お宅で整備されているということであり、ママたちはミルクとおむつさえ持っていけば、なーんにもする必要がありません。これは本当に便利!

また、1人のベビーシッターで複数の子供の面倒を見ているので、いわば「プチ保育園」のような感じになります。うちの子は生後3週間過ぎてから、ベビーシッターさんにお世話になり始めましたが、他に4人の子供がいたため、いつもかまってもらっていたみたいです。小さい頃からいろいろな人とコミュニケーションができるなんて、知能・社交性をのばすためにいいような気がしてならない。。。ちなみにうちの子は、眠い時とお腹が減った時以外は泣かず、大体ニコニコしてます。

そして何しろ安い! パリのような都会だと別かもしれませんが、フォンテーヌブローだと1時間あたり3〜4ユーロ。そして、Caisse Allocation Familialle (通称CAF)と呼ばれる社会保障関連のことを扱うところで申請をすると、前年度の収入に応じてベビーシッター代の何割かが還付される仕組みもあります。私は利用しませんでしたが、私のフランス人の友達はこの制度を利用し、1時間2ユーロくらいにまでなったとか。



そして、こうしたベビーシッターさんが数多くいるため、見つからないということがないのです。このため、「子供をあずけられないから復職できない」というママは皆無と思います。私も、こうした制度があったからこそ、産後1ヶ月で学業に復帰できたのです。

ちなみにうちの子はこのベビーシッターさんが本当に大好きで、毎日預けにいくと、ベビーシッターさんの顔を見るなりニッコリ、でした。

MBA修了!

10ヶ月ってあっという間。。。

2011年7月7日に、INSEADのMBAを修了いたしました!

2月に子供を産み、3月に授業に復帰し、夫やベビーシッターさん、そしてINSEADのたくさんの友達に支えられながら無事に終了することができました。本当にみんなに感謝です!!!


うちの子がお腹の中にいるときから始めたINSEADのMBA。終わるときも一緒にいたい!という思いで、修了式の時はうちの子も連れて行っちゃいました。

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と、ほとんどこのブログを更新していなかったということに気がつきまして。勉強したことの備忘録としての役割も兼ねたいと思っていたので、これから復職までの間、これまでの授業等について、書いていきたいと思ってます!

New York TimesにINSEADの記事が載りました!

INSEADってアメリカの学校とこんなところで違うんだ、というのがうまく書かれています。

受験を検討の皆さん、ぜひぜひご覧下さい!

http://www.nytimes.com/2011/07/24/education/edlife/edl-24europe-t.html?pagewanted=all

大まかに言うと、

  • ケース(授業で扱う企業の事例)の国際性
  • 生徒の多様さ
  • 「数字」よりも「関係」を大切にする
  • 1年で終わる(=スケジュールが相当きつい)

といった感じでしょうか。。。

INSEADは戦略コンサルタント養成学校?

最近、「INSEADって戦略コンサルタント養成のための学校なのでは?」と感じることが多くなってきました。私自身の授業の取り方にも偏りがあるかもしれませんが、アカウンティング、ファイナンス、戦略、マーケティングといろいろな種類の授業を取る中、節々でコンサルタント的な思考、アプローチが求められることが多いような気がするのです。

まず、アカウンティングでもマーケティングでも、多くのクラスに共通して言えるのは、「考え方」を学ぶ場であるということ。自社、競合、市場の状況による打ち手のパターンというか、定石のようなものを学びます。もちろん、これは教授の思いつきではなく、実際の世界中の企業のデータに基づいたもの。また、分析をする際には、フレームを使って物事を見る癖をつけることが求められます。もちろん個別企業の事例自体を学ぶことも大切とされていますが、その中での「事象」を「汎化」させ、これから起こることを「予測」し、具体的な打ち手を考える、というアプローチが多いように感じます。」

また、プレゼンの仕方もコンサルティングの現場で行われるようなプレゼンをするよう、教授より指示されることが多いです。授業によって細かいところは異なりますが、大まかに言って、「課題の明確化(Issue)」→「現状把握(Explain)」→「分析(Describe)」→「今後取るべきアプローチ(Proposition)」といった流れで進めることが求められる。

先生が話す内容の節々にも、コンサルの面接を意識した発言が本当に多いです。例えば、「こんなことコンサルの面接で言ったら面接官も目からウロコだよ(P2のManagerial Accountingの先生)」「君、そんな回答をしたらコンサルの面接で速攻落とされちゃうよ(P4のIndustry and Industry Analysis CompetitiveのKarel Cool教授)」といった感じ。これは、P2からP4までの間(P4にコンサルファーム採用募集があるため)、に顕著に見られます。

MBA修了後にコンサルを目指している方、INSEADは相当おすすめかも!?